TAVR用生体弁
高齢者など、外科的治療のリスクが高い重症大動脈弁狭窄症患者に対して行われる経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR、またはTAVI)に使用されるデバイスを紹介する。
エドワーズライフサイエンス:Sapien(サピエン)
バルーン拡張型のTAVR用デバイス。第1世代のSapienから改良を重ね、現在では3つ目のSapien Vが出ている。生体弁は牛の心のう膜で作られており、これは従来外科の大動脈弁置換術の生体弁でも使用されてきた素材である。
各デバイスの臨床試験は下記のとおり。
Sapien(PARTNER Trial)
Sapien XT(PARTNER U Trial、PREVAIL Japan)
Sapien V(PARTNER U Trial S3 Cohort)
Sapienは日本では承認されていない。日本で承認されているのはSapien XT(2013年6月薬事承認、10月保険償還)、Sapien V(2016年5月保険償還)である。
Sapien XT:Sapienからの改良点
フレーム部分をステンレスからコバルトクロムへ変更し、生体弁部分のデザインも変更された。
Sapien V:Sapien XTからの改良点
デバイスがコンパクトになり、血管径の小さい患者にも経大腿動脈アプローチが可能になった。また、課題とされている弁周囲逆流(PVL: Paravalvular Leak)を防ぐための構造として、ステント部分の外側にスカートが付けられた。デリバリーシステムが Novaflex+から、システム先端の角度がつけやすいCommanderに変更となり、位置決めの調整がしやすいシステムとなった
メドトロニック:CoreValve(コアバルブ)
ナイチノール製フレームの自己拡張型TAVR用デバイス。生体弁は単層のブタ心のう膜から作られており、逆流を防ぐスカートが付いた構造となっている。生体弁が収納されているデリバリーカテーテルの外筒を引くと、デバイスが徐々に拡張して留置される。自己拡張型のため、完全に留置する前に位置を微調整して最終的な位置決めをすることができる。また、完全にリリースするまでは、デバイスを回収することができる。
経大腿動脈アプローチ、経鎖骨大動脈アプローチ、直接動脈アプローチの逆行性アプローチのみ可能で、経心尖アプローチには対応していない。
スープラアニュラー(自己弁よりも高い位置)で留置が可能なため、より広い弁口面積を確保することが可能であり、血流の改善が期待できる。
欧米では、改良版のCoreValve Evolut Rが既に導入されている。留置位置を修正したい場合に回収してリポジショニングが可能になった。さらに、スカートを長くし、弁周囲逆流を軽減するデザインに改良されている。
ボストン・サイエンティフィック:Lotus valve(ロータスバルブ)
バルーン拡張型でも自己拡張型でもない、拡張制御型(controlled mechanical expansion)。フレームはナイチノール製。ウシの心のう膜から作られた生体弁がデリバリーシステムに搭載されている。
弁周囲逆流を防ぐためにステント外周に付けられたアダプティブシールが、人工弁と狭窄部位の隙間を埋めるような仕組みになっている。
留置の際、弁システムの拡張時から弁が開閉するため、血流遮断を最小限にすることができ、位置決めや留置を余裕を持って行うことができる。
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