血栓吸引療法

血栓吸引は日本では根付いた治療だが、海外では十分に評価されておらず、ネガティブなデータが報告されている。

適応:冠動脈の血栓性閉塞

・急性心筋梗塞…24時間以内の新鮮血栓
・不安定狭心症…造影で血栓性とわかったら
・ステント治療時の急性閉塞

※ST上昇型MIは血栓の関与が大きいので、血栓吸引を行うことが基本である。STEMI以外のACSでは必ずしも血栓の関与がの程度が強いとは限らないので、症例によって必要性を検討してから行う。

目的:遠位部塞栓の予防、slow flowの予防

末梢の情報を得てPCIの手技を容易にする
プラーク内容物の除去(石灰化病変には不要だが、lipid richのとき)

血栓吸引のメリット

バルーン拡張前にTIMIフロー3が得られる。VAMPIRE試験では2/3の症例で吸引のみでTIMIフロー3が得られた。

血栓吸引に関するこれまでの臨床試験

VAMPIRE試験

国内の23施設より、発症24時間までのSTEMI患者355人を登録し、TVAC使用の血栓吸引群と非血栓吸引群に無作為割付した。

1.述語のTIMIフロー3が得られた割合
血栓吸引群87.5% vs 非血栓吸引群80.6% (p=0.08)
有意差はないが、血栓吸引群で高い傾向が見られた。

2.発症から6時間未満or以降の再灌流でTIMIフロー3の割合
6時間未満では差はないが、6時間以降では血栓吸引群が有意に高かった。

3.術後のブラッシュスコア
吸引群:0/1…17.0%,2…36.9%,3…46.0% →吸引群で良好
非吸引群:0/1…37.1%,2…42.4%,3…20.5%

ASPARAGUS試験

日本で300人を登録し、PercuSurgeを用いて末梢保護を行う群と行わない群に割付した。

1.術後のslow flow/no reflow/遠位部塞栓の総発現率は、末梢保護群で有意に高かった。
2.院内、及び6ヶ月のMACEの割合→有意差なし
3.術後のTIMIフロー3の獲得率、ブラッシュスコア→有意差なし

VAMPIRE 2試験

日本の20施設で、AMI患者においてTVACによる血栓吸引とFiltrapによる末梢保護を組み合わせた治療を評価。
→VAMPIRE試験と比較し、術後のTIMIフロー3の獲得率に差がなかった。
→VAMPIRE 3試験が現在進行中。

TASTE試験

7000人を超えるSTEMI患者を登録し、プライマリーPCI時に血栓吸引を行う群と行わない群に無作為に割り付け、主要評価項目として30日の全死亡率を比較した。
→吸引群2.8% vs 非吸引群3.0% (p=0.63)で有意差はなかった。

Killip分類

急性心筋梗塞に伴う心不全の重症度を示すもの。

クラス1:心不全なし  死亡率5%  発現率30-40%
クラス2:心不全  死亡率17%  発現率30-50%
クラス3:重症心不全  死亡率38%  発現率5-10%
クラス4:心原性ショック  死亡率81%  発現率10-20%

心原性ショックとは…

急激な心臓のポンプ機能の低下による循環不全。最大の原因は急性心筋梗塞であり、心筋壊死により心臓機能が低下し、血圧が急低下し、最終的に意識消失でショック状態になることを言う。Killip分類ではAMIの10-20%で発現するとされている。

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