ヘパリン起因性血小板減少症(HIT: Heparin induced Thrombocytopenia)

ヘパリン起因性血小板減少症とは?

ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)とは、血小板の減少と血栓症(脳梗塞、肺塞栓症、深部静脈血栓症等)を伴う重大な副作用である。ヘパリンを使用する治療時に起きる合併症。機序によりT型とU型に分類され、臨床的にはU型がHITとされる。

T型
ヘパリン投与2〜3日後に発症し、免疫学的機序ではなく血小板数が10〜20%減少する。合併症はないため、原則治療は不要でヘパリンの継続投与も可能とされる。

U型
ヘパリン投与4〜15日後に発症し、ヘパリン依存性抗体の出現により引き起こされる(免疫学的機序)。血小板数は30〜50%減少し、血栓ができることで心臓、肺、脳や下肢の血管を閉塞させてしまう血栓塞栓症を伴う。抗凝固療法は代替薬で継続することで、ヘパリン投与を中止すると回復してくる。通常HITはこのU型のことを指す。

急性発症型、早期発症型、遅延発症型も存在し、発症のタイミングや発症様式が異なる。

HIT発症のメカニズム

抗PF4/ヘパリン抗体は、血小板第4因子(PF4)とヘパリンとの複合体に対する抗体である。PF4もヘパリンもそれ自身では抗原性を発揮しないが、複合体になると抗原性を発揮する。ヘパリンが投与されるとPF4との複合体が生成され、PF4の構造変化が起こることで、その複合体を新生抗原として抗PF4/ヘパリン抗体が出現する。

その一部に存在するヘパリン抗体(HIT抗体)は血小板を活性化させる働きがあり、血小板から血液の凝固活性化を促すマイクロパーティクルが放出される。血小板が活性化し集合体を形成することで血小板の数が減少し、トロンビンの過剰産生が促される。これが血小板減少症と血栓塞栓症につながるとされている。

一般的にHITの発症頻度は、ヘパリン使用者の0.5〜5%と言われている。基礎疾患により発症頻度は異なる。

HITの診断

HITの診断には、臨床的診断と血液学的検査とある。

4T'sスコアリングシステム

以下の4つの項目(臨床特徴)で0-2点の点数をつけ、その合計点数でHITである確率(Pretest probability score)を出す方法。

4項目の合計が 6〜8点で高い、4〜5点で中間、0〜3点で低いと判断される。ただし、このスコアだけで判断するのではなく、血清学的診断と合せて行われる。

血液学的検査

抗PF4/ヘパリン抗体の量を調べる免疫測定法が一般的である。また、抗PF4/ヘパリン抗体の血小板活性化能を調べる機能的測定法(functional assay)もある。

HITの治療には、ヘパリン投与を直ちに中止し、過剰に生成されたトロンビンを制御し出血のリスクを減らすため、抗トロンビン剤を投与する。抗トロンビン剤には、アルガトロバンがある。

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