家族性高コレステロール血症の治療にはPCSK9阻害薬

家族性高コレステロール血症の治療として期待されているPCSK9阻害薬。家族性高コレステロール血症とこの薬の働きについて説明する。

家族性高コレステロール血症(FH: Familial Hypercholesterolemia)とは?

LDLコレステロールは肝臓の細胞表面にあるLDL受容体と呼ばれるタンパク質によって細胞内に取り込まれる。LDL受容体が少ないと血液中のLDLコレステロール値が上がる。FHは、LDL受容体の遺伝子や、これを作用させる遺伝子に異常があり、血液中のLDLコレステロールがたまってしまう病気。

これらの遺伝子は、両親からそれぞれ1つずつ対になってできているが、この両方に異常がある場合を「ホモ接合体」、どちらか片方にのみ異常がある場合を「ヘテロ接合体」と呼ぶ。ホモ接合体FHは100万人に1人以上、ヘテロ接合体FHは500人に1人以上いると言われている。

血清総コレステロール値は、140〜199mg/dlが正常値と言われているが、ヘテロ接合体FH患者では平均320〜350mg/dl、ホモ接合体FH患者では平均600〜1200mg/dlと非常に高い。通常250mg/dlを超えると危険と言われている。

FHの原因遺伝子、PCSK9とは

PCSK9はproprotein convertase subtilisin/kexin type 9の略である。タンパク質を分解するプロテアーゼで、肝細胞より分泌される。家族性高コレステロール血症の原因遺伝子である。細胞内・外でLDL受容体に結合し、これを分解するスタチンなどの高脂血症治療薬投与により、血中PCSK9が増加することが近年報告されている。

PCSK9の機能を阻害すれば、LDL受容体の分解が抑制され、血中のLDL-Cは効率よく肝臓内に取り込まれ、血中LDL-Cの濃度を下げることができると考えられている。隔週または1ヶ月に1回の注射投与。

スタチン治療の現状

「スタチンの6%ルール」というものがあり、用量を倍にしても効果は倍ではなく、6%しか上がらないと言われている。これはPCSK9の発現が影響しているためと考えられている。

現在スタチンの治療が必要である患者の約10%以上(500万人超)が横紋筋融解症などの副作用で服用が困難とされる。また50%の患者がLDL-Cの降下目標値を達成できない状態にある。

PCSK9阻害薬による治療

スタチン不耐性患者、既存の治療でLDL-C値が100 mg/dl未満に到達しないヘテロ接合体FH患者を対象としている。LDLコレステロール値の低下だけでなく、心血管イベント発症の抑制効果が期待される。

各社のPCSK9阻害薬は下記の通り。

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