DCA(Direct Coronary Atherectomy:方向性冠動脈粥腫切除術)

バルーン形成術がスタンダードであった時代、急性冠閉塞や遠隔期の再狭窄(40-50%)が問題となっていた。これらを回避するために、1985年-1995年にかけて、ステント、ロータブレーター、DCAが開発された。

DCAの開発

1990年にFDAの承認を得たDCAは、アメリカのJohn Simpsonにより開発された。動脈硬化組織を切除できるため、より大きな内腔を確保することができリコイルを回避できる。

ステントが日本に導入された当時は適応がPOBA後のベイルアウトに限られており、現在のようにどの施設でも使用できる状況ではなかったところにDCA(アボットバスキュラー社)が登場し、大きく期待された。

しかし、欧米では臨床試験で良い結果が出せず、手技の煩雑さや合併症のリスクから受け入れられなかった。より開発の進んだステントが主流となり、2008年にDCAは製造・販売が中止された。

DCAにおけるIVUSの使用

欧米では、IVUSは使用せず造影を確認しながら円周上に削っていた。冠動脈プラークの8割以上は偏心性であるため、ただ円周上に削るだけでは正常組織も削り取ってしまい穿孔を引き起こすことが多かった。結果、急性期の合併症がPOBAよりも多く、欧米ではあまり評価されなかった。

日本ではIVUSガイドDCAが取り入れられ、プラークの分布を確認してから削るため、欧米よりも成績は良かった。

IVUSガイドDCAでは、通常のIVUS使用目的(ステントのサイズ決めや、拡張後の確認)と違い、本幹から分岐する側枝を見ることが重要で、造影所見とIVUS所見を合致して理解できるようになる必要がある。

Optimal DCA

過去の様々な試験から、残存狭窄率とIVUSで評価した残存プラーク量が再狭窄率に影響すると考えられ、残存狭窄率を15-20%未満、残存プラーク量を50%未満にするよう積極的にプラークの切除をするOptimal DCAという概念が生まれた。

期待されるDCAの使用

分岐部病変の治療においては、本幹をステント拡張すると側枝にプラークシフトやカリーナシフトが起こるため、DESだけでは完璧に治療することができないというのが課題である。ここで、ステント留置前にDCAで本幹と側枝入口部のプラークを切除すると、ステントも良好に拡がりカリーナシフトも少なくなる。場合によってはステントを入れなくても済む可能性がある。また、BVSやDCBとの組み合わせも期待されている。

DCAの臨床試験

CAVEAT試験(1991年、欧米)

欧米の多施設にて1,012人を登録し、PTCAとDCAを比較。手技成功率はDCA群で高かったが、6ヶ月の再狭窄率はPTCA群57%、DCA群50%で有意差はなかった。残存狭窄を十分に減らすことができなかったことが影響したとされている。

OARS試験(1993年、アメリカ)

アメリカの4施設でDCA治療を受けた199人を登録。残存狭窄率は7.1%、1年の再狭窄率は28.9%であった。

BOAT試験(1994年、アメリカ)

989人を登録し、DCAとPTCAの有効性を比較(無作為試験)。残存狭窄率はDCA群で14.7%、PTCA群で28.1%であり、再狭窄率はDCA群31.4%、PTCA群39.8%で有意差が示された。

ABACAS試験(1994年、日本)

日本の12施設で214人を登録し、IVUSガイドDCAとIVUSガイドDCA+PTCAを比較。残存狭窄率は、DCA+PTCA群で有意に低下したが、6ヶ月の再狭窄率とTLRの割合には差がなく、積極的なデバルキングを行えば追加のPTCAは必要ないという可能性が示された。

START試験(1995年、日本)

122人をIVUSガイドDCAとステント留置で比較。残存再狭窄率に差はなかったが、術後のプラーク面積率と6ヶ月の再狭窄率は有意に低かった。

SOLD試験(1998年、アメリカ)

シングルセンターで行われ、DCA+ステントで、DCA後の残存再狭窄率は31%であったが、ステント留置後には0.4%まで低下。1年のTLRは7%。

AMIGO試験(2004年、ヨーロッパ)

DCA+ステントとステント単独を比較。DCAでのデバルキングが目標の20%に対し32%で、8ヶ月の再狭窄率はDCA+ステント群の方が高かった。

DESIRE試験(2001年、日本)

IVUSガイドDCA+ステントとステント単独を比較。DCA+ステント群ではDCA後の残存狭窄率を2.1%にまで下げたが、6ヶ月の再狭窄率には差がなかった。これは、ステントエッジの再狭窄が影響していた。

PERFECTレジストリー(2004年、日本)

日本の17施設で冠動脈分岐部病変に対し、DCA+SES留置を行った99例を登録。9ヶ月の再狭窄率は4.5%。1年の追跡でTLRは2%のみであった。

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