冠動脈の慢性完全閉塞病変(CTO: Chronic Total Occlusion)の治療

CTOとは、Chronic Total Occlusionの略で、慢性完全閉塞を意味する。冠動脈の血管が動脈硬化により完全に閉塞してしまっている状態。心筋梗塞のようにプラークが破綻し急に詰まる病態とは異なり、徐々に閉塞し一般的に3ヶ月以上詰まっているものを指す。ガイドワイワーの発達、逆行性アプローチなどの手技の習熟によりCTO-PCIの初期成績は大きく改善した。また、DESの登場により再狭窄が大幅に減少し長期開存も望めるようになった。

CTO病変の種類

CTO病変の治療では、病変形態や性状に合わせてワイヤーを選択する必要がある。

Taperedタイプ

徐々に詰まったもので完全に詰まっていない。マイクロチャネル(micro channel)があり、長さは短めのものが多い。手技成功率が高いと言われている。マイクロチャネルがあるtapered ctoには、先端が細くポリマーコーティングや親水性コーティングの滑りやすいワイヤーが推奨される。

Abruptタイプ

一気に詰まったCTO。硬い線維性被膜(fibrous cap)で覆われている。硬い病変にワイヤーを通さなければいけないので、先端荷重が強い貫通力のあるワイヤーが推奨される。

側副血行路(コラテラルチャネル、collateral channel)とは?

CTO病変では、詰まった血管の血流を補うため、毛細血管が他の血管から伸びてきて血管と血管をつなぎ、血流を補う働きをする。血流が少なくなると徐々に側副血行路が発達するため、CTO病変でも自覚症状がないことがある。90%程度の狭窄ででき始めると言われている。一本の血管の閉塞部をまたいで側副血行路でつながっている場合は、ブリッジコラテラルと呼ぶ。

CTO-PCIの合併症

CTO-PCIでは、治療が困難な病変を扱うことが多いため、通常のPCIとは異なる合併症がおこるケースがある

■冠動脈穿孔(パーフォレーション)
CTOガイドワイヤー使用中に誤って冠動脈を貫通させて穴を開けてしまうこと。バルーンの急拡張やロータブレーターや偏心性石灰化病変のような偏りが生じやすい病変を拡張すると起きやすい。手技中に心電図変化を伴わない胸痛を訴えたらパーショレーションが疑われる。

■偽腔形成
血管は内膜・中膜・外膜の三層構造でできている。内膜の内側を血液が流れる真腔(true, トゥルー)、内膜と外膜の間を偽腔(false, フォルス)と呼ぶ。CTO病変では、閉塞した部分の血管走行がわからないため、真腔にワイヤーを通すことが難しい。偽腔にワイヤーを通してしまうと、解離を引き起こしたり、バルーン拡張時に穿孔(パーフォレーション)を引き起こす危険がある。

■手技時間が長く、造影剤使用量が多くなるため造影剤腎症を招いたり、放射線照射量が増えたりする

CTO-PCIの治療方法・手技

MSCD(マルチスライスCT)の活用

1.閉塞部位の走行を3次元に捉えられる
2.閉塞部位より末梢の血管構築が把握できる
3.閉塞長・血管径とともに病変性状がわかる
→治療戦略を決める判断材料になる

マイクロチャネル

病理学的にCTOの約3割で閉塞内部に順行性のマイクロチャネルが存在するとされている。最小のもので0.3mm程度だがガイドワイヤーが細いので通すことができる

ワイヤーの選択

まずはフォーストチョイスワイヤーで試し、ダメならテーパーワイヤーを使う(先端荷重の低いものから順に)。最初から貫通力の高いテーパーワイヤーを使うとパーフォレーションの危険があるため、ファーストチョイスワイヤーで様子を見る。特に、朝日インテック社から様々な種類のCTOガイドワイヤーが製造されている。

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