薬剤コーティッドバルーン(DCB: Drug-Coated Balloon)

薬剤コーティッドバルーンは、冠動脈疾患に使用されるデバイスで、バルーンの表面に新生内幕の増殖を抑制するパクリタキセル(抗がん剤の一種)が塗布されている。バルーンを拡張して血管壁に薬剤を付着させることで再狭窄予防を図る。Drug-Coated Balloon、略してDCBと呼ばれる。

国内では、B.Brown社のSeQuent Pleaseが2014年1月から使用が可能となった。

ステント内再狭窄とは?

ステント再狭窄はISR: In-Stent Restenosisと呼ばれる。ステント留置後、ステントを拡張したことで血管が障害されると、傷を修復しようと平滑筋細胞がステント内に遊走・増殖し、新生内膜の形成につながる。これが過剰に増殖し過ぎると再狭窄となる。

ステント内再狭窄には、従来バルーン拡張かDES留置が行われてきたが、バルーン拡張では何度も再狭窄を繰り返し、DESを重ねて留置することは再々狭窄のリスクが高まる上、次の治療選択肢が狭められる。また、遠隔期のステント内血栓症予防のため、長期のDAPTが必要になる。DCBはDESと同等の成績が報告されており、ステント内再狭窄治療の第一選択として推奨されている。

Unverdorben M, et al. Paclitaxel-coated balloon catheter versus paclitaxel-coated stent for the treatment of coronary in-stent restenosis. Circulation. 2009;119:2986-94.

DCBのメリットは?

バルーン表面に均一に薬剤が塗布されているため、血管全面に付着することができる。SeQuent Pleaseはバル−ン表面積1mm2あたり3μgのパクリタキセルが塗布されており、1回の拡張で90%を超える薬剤が放出される仕組みになっている。しかしながら、病変までのデリバリーの際に薬剤が落ちてしまうことも指摘されており、最終的に血管壁に吸収される量が減ってしまうことも課題となっている。

また、DESのように血管内に留置されないため、ポリマーによる炎症反応もない。バルーンなので、屈曲病変や小血管などステントを留置しづらい病変に使用が可能である。

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