造影剤腎症(CIN: Contrast-induced Nephropathy)

ヨード造影剤は注入直後に過敏症状が発現したり、時に重篤なショック症状を引き起こすことがある。これに加えて特に注意が必要なのは急性腎不全の発症である。通常は1週間程度で回復する可逆的な機能障害であるが、時として不可逆的な腎不全に陥るケースもある。

定義

造影剤曝露3日以内にSCr値が0.5mg/dL以上増加、もしくは25%以上増加すること(欧州泌尿器生殖器系放射線学会)
SCr25%を境に死亡率が急増し、カットオフ値として有用性あり。

機序

造影剤の投与により腎血管が収縮し、腎血流量や糸球体濾過量が低下するため、血管性の要因が考えられる。さらに、造影剤は尿細管細胞に対して直接的な細胞毒性を示すことも知られる。

リスクファクター

発症率は3.7〜70%と報告によって大きくばらついている。患者背景の違い、造影剤の種類によって異なってくる。

1.腎機能低下
2.投与量>150mL
3.糖尿病
4.高齢(≧70歳)
5.NSAIDsや抗菌薬等の腎障害を起こしやすい薬剤の服用
6.脱水

造影剤検査前のSCr値が特に重要!
正常範囲内の値であれば発症率は1〜2%程度であるが、1.5〜2.0mg/dL以上になると20〜30%になる。

※高リスク患者には投与限界量の計算式がある(Cigarroaの式)
=(5×体重kg)*/SCr値(mg/dL) mL *最大値300

予防

輸液が有効である(POSEIDON試験)

投与後、造影剤は速やかに腎臓へ移行し、蓄積され腎毒性が発揮される。腎毒性を最小限に抑えるため、造影剤を尿として排泄させるため。輸液により人傑流を維持し排泄を促す。

PCI後の血液透析

血中の造影剤除去を行う。昔は慣習的に行われていたが、海外でも無効であるとされ(むしろ有害!?)、現在ではあまり推奨されていない。

薬物による介入

血管拡張作用のある薬剤や抗酸化作用のある薬剤が造影剤による腎障害を予防、軽減するのではないかと期待され、多くの臨床試験が行われているが、現時点では予防効果が確立していない。
→Nアセチルシステイン(NAC)

炭酸ガス造影(Carbon Dioxide Angiography)

腎臓の機能が悪く、造影剤が使うことができない患者に対して行われる。通常の造影剤より画像の鮮明さは劣る。冠動脈に使用すると致死性不整脈を起こすので、基本は末梢血管にのみ行う。

ヨード造影剤の種類

浸透圧が血液に近いほど良い。溶液中の分子やイオンの数が多いほど浸透圧が高くなるが、浸透圧が高いものを投与すると組織が脱水し、反動で浮腫になり臓器不全になる。安全性の高い非イオン性造影剤やダイマー造影剤など低浸透圧の造影剤が開発されている。

*高浸透圧>低浸透圧>等浸透圧

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