大動脈内バルーンパンピング(IABP: Intra Aortic Balloon Pumping)

大動脈内バルーンパンピングは、心不全患者に対して行う補助循環の1つである。全身へ血液を送り出すポンプの役割をする心臓が心不全により機能しなくなった際に、大動脈内でバルーンを拡張・収縮して血液循環を補助する方法である。

IABPとは?

Intra Aortic Balloon Pumpingの略で、大動脈内バルーンパンピングを意味する。急性心筋梗塞などで心不全に陥ると、心臓が血液を体に循環させる機能が弱まる。これに対し、心臓に近い大動脈内でバルーンを拡張・収縮することで一時的にポンプ機能の代わりをする補助循環のこと。IABPにより血液循環の補助をしながら、自己の心機能回復を待つ。

IABPの流れ

バルーンカテーテルを大腿動脈から挿入し、胸部下行動脈内に留置する。外部駆動装置によりヘリウムガスで心臓の拡張期にバルーンを拡張し、収縮期にバルーンを収縮させる。

拡張期には、血流は大動脈から冠動脈へ流れるが、大動脈でバルーンを拡張させることで、冠動脈への血流が促進される。よって心臓へ十分な血液(酸素と栄養)を送ることができる。反対に、収縮期には心臓から大動脈へ血液が送り出されるため、バルーンを収縮することで大動脈に陰圧をかけ、心臓から血液を引き出すことができる。これにより心臓の血液を送り出す負担を軽減することができる。

心臓の拍動に合わせて、1日に約10〜15万回拡張・収縮を繰り返す。心臓のリズムは、動脈圧波形や心電図波形で確認をする。IABPによる補助効果(心拍出量の増加)は約15〜20%と言われている。

IABPの適応と禁忌

IABPの適応患者には、急性心筋梗塞、虚血性心疾患、不安定狭心症、心不全、心原性ショックなどが挙げられる。また、心臓カテーテル治療(PCI)時や冠動脈バイパス術(CABG)の前などに血行動態補助として一時的に行われることもある。

バルーンを拡張することで破裂の危険があるため、大動脈瘤や大動脈解離など、大動脈に疾患がある患者には禁忌とされる。また、重症大動脈弁閉鎖不全症の患者では、バルーン拡張時に左室へ血液が逆流し心不全を悪化させる可能性があるため禁忌である。バルーンを運ぶ腸骨動脈〜大動脈の石灰化が厳しい場合は、バルーンの破損や血管損傷を引き起こす危険がある。

IABPの合併症

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