僧帽弁閉鎖不全症(MR: Mitral Regurgitation)

心臓には4つの弁があり、Mitral Valveと呼ばれる僧帽弁は左心室と左心房の間に位置し、肺から流れてきた血液が左心房から左心室へと流れ、大動脈弁を通って全身へ送れられる。この僧帽弁の閉鎖機能が悪くなると、左心室から左心房へ血液が逆流してしまう。

症状としては、はじめのうちは無症候であることが多く、進行すると息切れ・動悸、さらに重症になると呼吸困難やむくみの症状が現れる。血液が左心房に逆流することで、左心房が膨張し肺で血液がうっ滞し心不全が起きる。

僧帽弁閉鎖不全症の原因とは?

原因はさまざまあるが、最も多いものが僧帽弁逸脱症である。僧帽弁にはヒモ上の腱索というものが付いており、収縮期と拡張期に弁が正常に機能するようになっているが、この腱索が断裂したり伸びてしまい、左心室から左心房への逆流が起きてしまうのが僧帽弁逸脱症である。閉鎖不全の原因としては、その他にリウマチ熱によるものや、動脈硬化による弁の石灰化、感染性心内膜炎によるものもある。

僧帽弁閉鎖不全症の検査方法は?

心エコー(心臓超音波)検査により、どの弁(前尖、後尖)が逸脱しているか、逆流の重症度を診断する。心臓カテーテル検査を行うこともあるが、非侵襲的な心エコー検査で十分診断が可能である。

NYHA分類

NYHA(New York Heart Association:ニューヨーク心臓協会)による心機能分類で、心不全の重症度を自覚症状をもとにT〜W度で分類している。

T度:
心疾患はあるが、身体活動に制限はない。日常的な生活での活動では著しい疲労や動悸、呼吸困難、胸痛を生じない。
U度:
安静時には無症状だが、軽度の身体活動の制限がある。日常的な身体活動で疲労、動悸、呼吸困難、胸痛を生じる。
V度:
安静時には無症状だが、中等度〜高度な身体活動の制限がある。日常的な軽度な身体活動でも疲労、動悸、呼吸困難、胸痛を生じる。
W度:
軽度の身体活動も制限され、安静時でも心不全や狭心症の症状があり、少しの身体活動でも症状が悪化する。

僧帽弁閉鎖不全症の治療法は?

これまでは外科的治療が一般的で、機械弁または生体弁を留置する弁置換術と、自身の弁を残して 弁形成術がある。置換術よりも形成術の方が手術の難易度は高いが、形成術の方が術後の成績が良く、ガイドラインでも形成術を第一選択とするように記されている。僧房弁形成術は逆流の原因となっている弁尖を切除し、人口腱索を縫い付け再度弁が機能するようにする治療法である。

手術ができない重症僧帽弁閉鎖不全症には、最近では開胸手術をせず、太ももの付け根からカテーテルによりMitraClipというクリップを運び、僧帽弁の前尖と後尖をはさみ合わせることで左心房への逆流を軽減させる、より侵襲度の低い治療法が注目されている。外科的手術に比べ回復が早く、入院期間も短く済む。

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