抗血小板薬

血小板が固まるのは、動脈などの血流が早い場所。動脈の弾力性が失われて硬くなる病気を動脈硬化という。プラークができると血管が傷つきやすく、ここから出血することがある。その際にできた血栓が脳卒中や心筋梗塞を引き起こす可能性があるため、血液をさらさらにする薬「抗血小板薬」が使用される。日本では、現在アスピリン、チクロピジン、クロピドグレル、シロスタゾール、プラスグレルが使用されている。

副作用の多いチクロピジン

チクロピジンは副作用による死亡例もあり、厚労省が2回緊急安全性情報で警告を発したことがある。

血栓性血小板減少性紫斑病(TPP)

異常な血栓が生成されて、全身の細い血管を詰まらせてしまう病気

無顆粒球症

体内に侵入した病原菌を殺すために必要な好中球が減ってしまう病気

肝機能障害(特に日本人に多い)

劇症肝炎、胆汁うっ滞型肝障害。肝臓の働きが低下していると、薬の代謝が遅れ血中濃度が上昇、重い副作用や中毒症状を引き起こす。

※ACS症例では早急な抗血小板作用が必要だが、チクロピジンは肝障害の副作用があるためローディングができず、当時緊急PCIはできなかった。全て待機的PCIで、2週間くらいかけて服用し血小板機能を下げるようにしていた。

クロピドグレルの登場

チクロピジンの改良版として、クロピドグレルが開発された。チクロピジンに比べて副作用が少なく、ローディングが可能なため、緊急PCIが可能になった。1日1回投与というのもメリット。

クロピドグレルは肝臓で薬物代謝酵素の1つであるCYP2C19 により代謝され、薬効を発揮する。このCYP2C19に遺伝子多型が生じると、代謝活性が低くなり効果を示さないことがある(クロピドグレル不応症)。

このクロピドグレル不応症はアジア人に多く、欧米人で約3%、日本人では約20%と言われている。プラスグレルやチカグレロールはこの遺伝子多型に影響を受けない

※2013年2月に物質特許が切れている。

クロピドグレルの適応

アスピリンによる消化管出血の副作用

消化管は上部消化管と下部消化管に分けられ、上部消化管は食道、胃、十二指腸を指し、下部消化管は小腸(空腸・回腸)、大腸(盲腸・結腸・直腸)、肛門を指す。

アスピリンによる抗血小板療法は、上部消化管出血のリスクを増加させるとされている。アスピリンは胃粘膜傷害を引き起こし、アスピリン潰瘍やびらん性胃炎などから出血を生じる。アスピリン潰瘍の危険因子としては、消化性潰瘍、消化管出血の既往、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ヘリコバクター・ピロリ感染が挙げられる。

消化管出血を合併した患者の予後は著しく悪く。消化管出血を来すと抗血小板療法を中止しなければならず、出血量が多いと輸血が必要になる。

新規抗血小板薬 チカグレロル(日本国内では未承認)

他の抗血小板薬と異なり、P2Y12受容体に直接作用し血小板活性を阻害する。チクロピジンやクロピドグレル、プラスグレルはプロドラッグと呼ばれ、肝臓で代謝された後に活性化され、P2Y12受容体をブロックする。

ACS患者における心筋梗塞や心血管死等の血栓性心血管イベントの発生率を低下させることが示されている。

チカグレロルのメリット

直接受容体に作用するので、投与後30分以内に抗血小板効果が得られる。緊急PCI時(ACS患者)でのローディングに使用できる可能性。 一方、プロドラッグのクロピドグレルなどは、効果発現まで2-3日かかるとされている。

受容体への結合が可逆性のため、中断後2-3日で血小板機能が回復する。手術を控えている患者に使用できる。ただし、飲み忘れるとすぐ血液が固まりやすくなってしまうため、服薬コンプライアンスが悪い患者には難しい。クロピドグレルは血小板への影響が不可逆性のため、中断後2週間くらい効果が続いてしまう。

CYP2C19遺伝子多型による影響を受けない。

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