心房細動(AF:atrial fibrillation)

心房細動とは?

全身へ血液を送り出す心臓は、自身で興奮刺激を発して拍動する刺激伝導系を有する。右心房にある洞結節(SN: Sinus Node)が電気的興奮を発し、リズムを作り出すペースメーカの働きをしている。

洞結節で発せられた電気的興奮は心房を通り、房室結節、心室へと伝わる。これが一定のリズムである状態を正常洞調律と言う。心房細動は、この洞結節以外に心房の複数の箇所から異常な電気信号が出て心房が小刻みに震えて脈拍が乱れる不整脈の1つである。

心房細動はなぜ危険か?

心房細動になると、心房が正常に収縮できず血液の流れが悪くなり、左心房内に血栓ができやすくなる。この血栓が動脈を通って脳の血管に詰まると心原性脳梗塞を発症する。脳梗塞は他に、主に高血圧により細い血管が詰まって起こるラクナ梗塞、動脈硬化によるプラークが破裂して血栓が詰まるアテローム血栓性梗塞がある。

しかし、心原性脳梗塞はこの2つに比べて突然太い血管が詰まるため梗塞範囲が広く重症度がかなり高く、12ヶ月生存率は50%を下回ると言われている。また、一命を取り留めたとしても後遺症が残ることが多く、約60%は補助なしでは歩けなくなると言う。

心房細動の原因は?

心房細動は高齢者に多く、80歳以上では約10人に1人が発症すると言われている。また、男性は女性に比べて1.5倍発症しやすいと報告されている。加齢の他に、喫煙、飲酒、ストレスなどの生活習慣によるものや、高血圧や糖尿病も心房細動の危険因子とされている。

心房細動の治療

非薬物療法

カテーテルアブレーション

カテーテルを用いて、異常な電気信号を出している心房筋を熱で焼灼する治療。1回での成功率は約7〜8割。薬と違い根治できる治療である。

ペースメーカ

脈が遅くなる徐脈を併発している患者には、ペースメーカ植え込みをすることがある。脈拍を正常に戻し、心房細動を誘発しないようにする。

薬物療法

薬物療法には、心房細動を停止させ洞調律維持を目指すリズムコントロールと、洞調律維持はあきらめ心拍数のコントロールを目的とするレートコントロールがある。

リズムコントロール

抗不整脈薬により心房細動をなくし、心拍性を正常にする。

レートコントロール

β遮断薬、ジギタリス、Ca拮抗薬などにより心拍数が早くなりすぎないように調整する。これにより動悸感は軽減される。

心原性脳梗塞発症のリスクは?

心房細動による脳梗塞発症リスクを評価するスコアとしてCHADS2スコアがある。5つのリスク因子の頭文字から命名されており、合計点が高いほど脳梗塞の発症リスクが高くなる。

2013年改定心房細動治療ガイドラインでは、CHADS2スコア2点以上は全ての抗凝固薬を推奨している。NOACは1点から推奨されている。ワーファリンは考慮不可だったが、NOACは低リスクから使えるようになった。

CHADS2スコア0点でも2%のリスクがある。これを受け、さらに細分化して評価したものがCHA2DS2 VAScである。

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