冠動脈穿孔(Coronary perforation)

PCIの3大重大合併症(Major Complication)は心筋梗塞、緊急バイパス手術、死亡である。その他のMinor Complicationの1つに冠動脈穿孔がある。このページでは、冠動脈穿孔の原因と治療について説明する。

冠動脈穿孔はなぜ起きるか?

POBAにより治療がされていた頃は、バルーン拡張により解離が起こり(血管の内膜が傷つき剥がれる)、それにより形成された血栓が詰まる急性冠閉塞が頻繁に起こっていた。これを解決するためにステントが開発され、ステント留置により解離した部分を金属で支えることで急性冠閉塞は大幅に減った。

しかし、PCIの適応が拡大し、石灰化病変やCTO病変などの複雑病変を治療するようになったことで、その際にカテーテルやガイドワイヤーで血管を傷つけ穴を開けてしまい、血液が血管壁外に漏れてしまう冠動脈穿孔が起こるようになった。硬いガイドワイヤーでは、特に穿孔が起きやすい。バルーンやステントの過拡張や、DCAやロータブレーターなどのデバルキングデバイスを使用する際にも注意が必要である。

冠動脈穿孔の診断と症状

穿孔が起きると、冠動脈造影やIVUSで冠動脈壁外にできた血腫が認められる。また、胸痛や心電図変化が生じる。穿孔による心嚢内出血で、心筋の動きが妨げられる心タンポナーデに至ることがある。心タンポナーデになると血圧が低下し、ショックとなる場合が多く緊急を要する。この場合、直ちに心嚢ドレナージを行う必要があり、場合によっては緊急手術となる。

冠動脈穿孔の分類(Ellis分類)
TypeT:Extra-luminal crater without extravasation
TypeU:Pericardial or myocardial blushing without contrast jet extravasation
TypeV:Perforation(>1mm) diameter with contrast streaming
(Circulation 1994; 90: 2725-30)

冠動脈穿孔への対処法

冠動脈穿孔が起きた場合は、早急に止血処置が必要である。バルーンにより長時間(15〜30分)圧迫止血をする。圧迫止血が困難な場合は、コイルや脂肪組織、血栓による塞栓術やカバードステント留置、または緊急手術を行う。

Perfusion balloonとは?

バルーンの拡張時も末梢の血流が保たれる構造になっているため、穿孔の止血処置に有効。通常のバルーンを拡張して止血する場合、その間血流が遮断され虚血状態になってしまうため、長時間続けることができない。KanekaのRyuseiがある。

カバードステントとは?

穿孔による心嚢内への血液漏出に対して使用する。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の膜でステントが覆われており、血液の漏出を止める役割がある。アボット社のGRAFTMASTERがある。

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